昭和の大作家も愛した逸品。
人知れず山里の人々に愛されてきた柿の葉ずしをいち早く日本中に紹介したのは、昭和を代表する作家、谷崎潤一郎でした。代表作のひとつである随筆『陰翳禮讚(いんえいらいさん)』のなかで、谷崎は「吉野の山間僻地の人が食べる柿の葉鮨」として、その作り方などを事細かに紹介するとともに「東京のにぎりずしとは違った格別な味」、「今年の夏はこればかり食べて暮らした」などと、柿の葉ずしを食した感想を語り、褒め讃えています。食品の保存方法が確立していない当時、 柿の葉ずしは保存食としても重宝されていましたから、きっとこの大作家も、奈良の土産には柿の葉ずしを持ち帰ったのではないでしょうか。